EXHIBITION

人と人をつなげる
食品パッケージ展

MITTSU PROJECT(みっつプロジェクト)は、2023年11月17日から11月19日まで、表参道にある複合文化施設「スパイラル」で展示会を開催しました。本展では、4組の若手デザイナーが「人と人をつなげる食品パッケージ」をテーマに制作した、少し未来の「包む」を展示。延べ約2,000人が来場しました。

展示会名

MITTSU PROJECT
-人と人をつなげる食品パッケージ- 展

会期

2023年11月17日(金)-11月19日(日) 11:00-19:00

会場

スパイラル 1F エントランス(住所:東京都港区南⻘山 5-6-23)

参加デザイナー

  • イシタ キョウ
  • ta_rabo
  • 21B STUDIO
  • 若田 勇輔・有留 颯紀

アートディレクション・展示構成

有村 大治郎(21B STUDIO)

主催

株式会社マルアイ

WORKS

計量機能付きパスタ用パッケージ -「計量」で人と人をつなげる食品パッケージ-
イシタ キョウ

パスタの分量を量りながら取り出せる、紙製のパッケージデザインです。取り出し口の開閉角度を変えることで、欲しい分量のパスタを素早く取り出すことが可能です。
一般的にパスタの一人前は100gとされており、国内で販売されている商品も100gで小分けにされているものが多くあります。ですが、本当に満足できる一人前は性別や年齢などで異なっており、男性の場合150〜200g程、女性は90〜100g、子どもは80gが目安と言われています。
はかりを使用すると正確に計量することはできますが、パスタを出し入れする工程は非常に面倒なため、小分けされた100gをそのまま使用したり、適当に掴んで量るという方が多いのではないでしょうか?そして、それにより「作りすぎ」の状況が生まれ、廃棄によるフードロスや無理な食べ過ぎ等の問題が生じているのではないかと考えました。
本提案デザインは、①パスタを取り出す②分量を量る、という二つの工程を同時に行うことで最適な分量を量り、環境と人の双方に配慮することを目指した、パスタ用パッケージの新しいカタチです。

デザイナーのコメント

これまでの人生で、もっとも食品パッケージについて考えた半年間でした。「少し先の未来の食品パッケージを作って欲しい」というお声がけを頂いてから、身の回りのパッケージを注視し使ってみると、様々な配慮が施されていることに改めて気づきました。そしてそこには、「人々の暮らしをより良くしたい」という作り手の想いが込められているように感じました。 私の今回の作品も、そんな他のパッケージと同様の想いでデザインしたつもりです。 展示会場では、多くの方からお褒めのお言葉を頂きましたが、今回のデザインが人々の暮らしを本当により良くできるのか?それはまた、5年後か10年後か「少し先の未来」に答え合わせをしたいと思います。ありがとうございました。

Food Hood -「安心」で人と人をつなげる食品パッケージ-
ta_rabo

「備えるをシェアする」-食べられる防災頭巾
Food Hoodは防災頭巾型のフリーズドライスープのパッケージ。スキンパックという食品に密着する技術を用いることで、パッケージに構造が生まれ道具として機能するプロダクトです。郵便ポストや宅配ボックスの中に備えておくことで、平時には配達される郵便物のクッションとして密かに機能し、有事の際には身を守る防具として役立ちます。フリーズドライスープはクッション材の役割を果たし、もしも粉々になっても避難先で美味しく食べられます。
阪神淡路大震災、東日本大震災の避難所における食生活調査によると被災地に送付される食品は、炭水化物(ごはん、パン、麺類など)が多く、たんぱく質・ビタミン・ミネラル・食物繊維の不足が生じやすい状況でした。特に高齢者にとっては、冷たいごはん(おにぎり)など、飲みこみにくい食品が多くなっていました。
その様な実態から、パッケージする食品にはビタミンとタンパク質を豊富に含むフリーズドライスープを選びました。有事の際にはそれをシェアすることができます。
郵便ポストから、身近な大切な人への備えとして。避難所では不足しがちな栄養をシェアするパッケージとなることを願います。

デザイナーのコメント

135周年を記念する歴史的な展示を一緒に作らせていただき非常に光栄に感じています。遠巻きに多くの方が興味を持ってくださり、説明の中で理解して頂き、奇を衒っただけのデザインではなく合理性を理解し、共感いただけたように感じています。数名の方から「どのようにこのアイデアを思いついたのですか?」とご質問をいただきました。「日常的に不思議に思っていた、お米の真空パックの開封前後の硬さの違いを応用することを考え避難所に不足する栄養事情などを考慮し、思案しながら試行錯誤を繰り返し逆算的にデザインしました。」と回答しました。私自身、鋭い視点を持った来場者の皆さんとつながり気づきを得る貴重な機会となりました。

調味料のインターフェース -「調味料」で人と人をつなげる食品パッケージ-
21B STUDIO

料理に使う調味料には、「美味しく食べてほしい」という作り手の想いが乗っている。料理をすることは人を想うことであり、調味料は人と人の間にあるささやかなコミュニケーションと言えるのではないだろうか。
代表的な調味料である塩と砂糖は、よく似ているようで、実は拡大してみると結晶の形に大きな違いがあり、それが質感の差となって表れる。
本提案は、調味料の持つこの僅かな質感や印象の違いを、プロダクトのインターフェースとしてデザインすることで、誰もが視覚や触覚を通して情報を感じ取ることができるパッケージの考察。
従来のパッケージでは必要不可欠だった文字などの平面の情報を、「立体の情報」に変換することで、広告的な訴求方法から抜け出すことができ、よりインテリアに馴染み長く使いたくなるデザインを考える余地が生まれる。店頭でアピールするための過度な情報は、生活に取り入れる時点で不要となり、ノイズへと変わる。かつてはノイズであったその情報は、プロダクトの個性となって表れる。
誰もが直感的に内容物を認識出来る仕掛けにより、パッケージの可能性を広げる「調味料のインターフェース」。

デザイナーのコメント

こういった合同展では、素材や技術をテーマとすることでプロジェクトに一貫性を持たせる事が多いですが、今回のMITTSU PROJECTは、「包む」そして「繋げる」という、人の想いに寄り添うテーマからスタートしたのが新鮮でした。
テーマの広さ故の課題設定の難しさはあったものの、結果的にはモノの先にいる人の事を考えることにつながり、思いやりに溢れた「マルアイ」という会社ならではの展示になったと思います。
スパイラルでの開催も功を奏し、広い客層の方々に展示にお立ち寄りいただけた印象があります。少し先の未来について、皆さんと一緒に考える機会となり、私たちにとっても素晴らしい体験となりました。

想像を味わう -「想像力」で人と人をつなげる食品パッケージ-
若田 勇輔・有留 颯紀

私達は舌だけでおいしいと感じているわけではない。食べ物の名前や香り、手触りやその場の雰囲気まで、口に含むまでの様々な情報に味覚は大きく左右される。例えば屋台のかき氷のシロップは全て同じであるにもかかわらず、味の名前と香料、色によって味が違うかのように錯覚させている。人は"情報を食べている"と言えるだろう。
この作品は食品パッケージにおける情報、特に香りの変化によって人の想像力を引き出し、味覚を拡張するパッケージデザインである。パッケージには「深い森」「雨上がりの朝」など誰もが想起できるシチュエーションが記載されている。イメージごとの色・素材でデザインされた外装を開封すると、シチュエーションに応じた香りが嗅覚を刺激する。すると中のお菓子の味は全て同じであるにもかかわらず、脳が錯覚してパッケージごとに、そのイメージの状況で食べているかのように味が変わる。まさに情報そのものが味になるパッケージである。
既存の味を最大化するためでなく、人の想像力によって新たな味を引き出すパッケージにより、今までにない味が生み出されるのではないか。そんなデザインの未来を期待させるプロトタイプである。

デザイナーのコメント

私達は今回の制作において「形をつくるのではなく体験をつくる」という点を重要視しました。食品パッケージは既に多種多様なデザイン事例がありますが、多くの食品パッケージが装飾的・広告的な発想で作られており、食体験を本当の意味で豊かにしていると言えるものは少ないと感じました。そんな中「パッケージそのものが味を直接的に変える」というこれまでにないデザインが実現すれば、未来のパッケージデザインに様々な期待を抱かせる展示になるのではないかと考えました。結果的に香りや色などを利用し、人の想像力を活かして味を変えるというチャレンジングなアイデアを実現でき、かつ実際に食べていただけなくとも想像以上に来場者にコンセプトが伝わったことを嬉しく思いました。今回の制作を活かしながら、引き続きアイデアの発展と実現を模索していきます。